5:50少し早めに家を出た。玄関のドアを開け、薄雲が掛るほの暗い空を見上げた。雨粒が肩にかかった。美緒は自転車で行くつもりだったが、小雨が降ってきたのでピンクのビニール傘をさし電車で行くことにした。6:00駅から電車に乗り込むと雨のせいか電車の中は満員だった。4つ目の駅で電車を降り美緒は再び歩きだした。6:17美緒は葉山葬祭に到着した。斎場の外には大きな木製の看板のような物が建っていた。そこには大きく『故・原田拓矢』と書いてあった。その文字を見て美緒の目からどっと涙があふれた。その姿を見ていた拓矢の母親の弘美が斎場から飛び出し、「よく来てくれたわね。拓矢が中で待ってるわ、さぁ中に入りましょう。」と小さな子供をあやすような口調で言った。美緒は泣きながら斎場の門をくぐった。中には拓矢の親戚や同級生の姿が見受けられた。「そろそろ中にお入り下さい。」斎場の係員の声と共に参列者は拓矢の棺や遺影が置かれた静かで冷たい空気が流れる部屋に入っていった。美緒は遺族席に座らせられた。遺族席には拓矢の父、母、伯父、伯母、祖父母、正章、美緒の順に座っていた。通夜が進むにつれ、だんだんすすり泣く人の数が増えてきた。