通夜は順調に進み、いよいよ焼香の時が来た。参列者の涙をこらえたり、こらえきれずに涙をこぼす姿が美緒の涙で潤んだ瞳に映っていた。美緒は通夜が終わるまで必死に涙をこらえた。通夜が無事終わり参列者が帰った後、美緒は一人拓の棺の前にひざまづいた。そして拓の顔にやさしく手を伸ばし顔の輪郭をなぞった。思わず涙が拓矢のまぶたに落ちて跳ね返った。美緒は拓矢のまぶたに落ちた涙を綺麗に拭き取り、もう二度と帰って来ない心から愛した人の唇にそっとキスをした。美緒は気付いていなかったが、その一部始終を正章はずっと見ていた…。