別にそんなに気にしているわけではないのだが、皆は苗字で呼びたいらしい。
そして今、僕の目の前でもじもじしている娘は坂城 麻弥(さかき まや)。
僕と麻弥は一応、彼氏彼女の関係になっているらしい。
何故なったか忘れた。
彼氏彼女の証拠としては、僕はこの娘を麻弥と下の名前で呼び、麻弥も僕のことをハルと呼んでいる。
ハルと呼んでいるのには理由があり、
「遥では女の子と付き合っているみたいで実感が湧かない」
らしい。
僕のことをハルと呼ぶのは親族以外では麻弥だけ。
それも手伝って、麻弥にはかなり素直になれる。
それから麻弥はちょっと変わった娘で、不思議な力が使える。
「自分」を保ったまま「自分」を作りだし、「自分」を武器にする、よく分からない力。
僕が考えるに、これは同調する分身なのだと思う。
だから、武器の痛みが身体に伝わり、武器が壊れれば所有者が死ぬのだ。
使える者は僅かだが、使い方は至って簡単。
何か適当な物を手に握り、念じるだけだ。
でも物が大き過ぎたり小さすぎたり不適切な物だとできない。
ちなみにこの力は僕も使える。
ただ、この力のせいで変な連中に襲われることもしばしば。
それでも、僕も麻弥も生きている。