(馬鹿め。正面から突っ込んでくるとは)
部下の少尉が嘲るように言った。
そう。馬鹿。だが、
「嫌いではないぞ」
クロイツは月軍の主力WW「D-Cα」通称「黒猫(ダークキャット)指揮官専用機」を唸らせ、躊躇いもなく放たれた矢のように飛んでくる零目がけてライフルを2発撃ちこんだ。
だが、零はくるりと旋回し、硬質鉄鋼弾を回避する。
「!」
面白い奴だ。避けるか。
「少尉。残りの手勢を率いて後ろの連中を殺れ。私はこいつをやる」
(了解しました)
ヨコハマ基地から連れてきた15機のダークキャットが横を通りすぎていく。
続いて無線を弄る。
「ヨコハマ基地所属、ハーケン・クロイツだ。カリプソ、聞こえるか?」
(・・・クロイツ中佐!ご支援感謝いたします。さすが・・・)
前方を行くアント級補給艦カリプソの禿げた中年艦長が媚びるような目を向けてくる。
「今回の事は貴殿の失態。我々に火の粉が降り掛かる事はない。ご安心めされよ」
みるみる顔を青くする艦長。
クロイツは続けた。
「それより、例の兵器の事だ。我々はそれの絶対防衛が任務。あれを発進させていただきたい。我々が御守り致す」