考えてもみなかった
予想もしなかった
こんな悲劇を
突然の残酷な告白
彼に悪気は無い
だって私の気持ちなんて知らないのだから
彼とお酒を飲める事が嬉しくて楽しくてはしゃいで
それなのに胸がとてつもなく痛くなった
何秒か前までの少し酔った頭が一瞬で正常に戻る
『彼女がさ』
会話の中に聞こえてきた言葉
耳を疑うよりも意味が分からなかった
『電話が』と光りもしない鳴りもしない携帯を握り締めてその場から逃げた
外の空気が冷たくて益々酔いは冷める
知らなかった
知ろうともしなかった
誰かの存在を
ただ好きになっていて一緒にいたくてそれだけで
始めから聞けば良かった
自分を責める事しか出来ない
どんな顔して戻ればいい
どれくらい時間が過ぎただろう
戻る足取りが重たい
深呼吸をして彼を見た
『長かったね』と何も知らない笑顔の彼がそこにいてその表情がまた辛くさせる
無気力な体
倒れ込むように座る私を見て『飲み過ぎだよ、大丈夫?』って優しく声をかける
大丈夫なわけがない
彼の手が私の腕に触れた瞬間私はその手を力いっぱい跳ね除けた
涙も出ない
言えない
本当は好きだったとか私を見てとか
可愛くなくてもいい
もうどうでもいい
『飲み過ぎだね』
俯いたまま顔を見れない
『送るから』
彼は優し過ぎる
また勘違いしてしまうから深く傷付いているうちに別れよう
『一人で帰りたい』
もう会えない
また好きになりたくはない
わがままだけど許して欲しい
一人にはなりたくないけど
ずっと一緒にいたいけど
これ以上の言葉はいらない
彼の声も言葉もいつも優しさに満ち溢れていたけど今は残酷なだけ
今は彼の優しさが悲し過ぎる