想像の看守 ?

ユウ  2008-02-24投稿
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「……は?」
裕一は耳を疑った。じゃあこいつが、この美術館の管理者?まさか。
「あ、その顔は信じてないなー?うーん……。近くに侵入者がいれば捕まえてみせて証拠にできるんだけどなぁ。」
少年はそう言って辺りをキョロキョロし始めた。裕一は思わず身を固くする。そして思った。こいつマジでバカじゃねーの?
「あ、そーいえば」
その時、少年が裕一を勢いよく振り返ったので、裕一はびくっとなった。
「キミ、名前はなんていうの?あ、ちなみにボクはキンだよー。よろしくね!」
子供っぽい笑顔と共に手を差し出され、裕一は呆然とする。本当になんなんだ、こいつは……。
少年――キン――は、手を差し出したままにこにこして待っている。流石に申し訳なく思っておずおずと手を出すと、その手をぎゅっと握られてブンブン上下に振られた。
「それで、キミ、名前は?」
「……裕一。河合裕一。」
「ユーイチかぁ。なんかユーウツみたいで嫌な名前だけど、まぁ、よろしくねー」
「……」
裕一はバッと少年の手を振り払った。クルッとキンに背を向けると、大木の脇に置いてある自分の鞄に、持ったままになっていた本を放り込む。それから鞄の紐を肩にかけると、すたすたと歩き出した。
「ちょ、どこ行くの!?」
「帰る」
「えぇ?ほんのジョークじゃーん。ごめんってばー」
「……」
裕一は構わず歩き続ける。別に怒ったわけじゃないが、急に面倒くさくなったのだ。それに、キンの言うように本当に彼が管理者なら、ここに長居するのはまずい。いずれバレてしまう。
「ちょっとー。ユーウツくーん」
キンの間延びした声が後ろから追いかけてきたが、裕一は無視した。裕一はそのまま、闇の中へと消えていった。
キンは光の輪の中に突っ立ったまま、はぁ、と肩を落とした。
(難しい子だなぁ。仲良くなるの、大変かもなぁ……)
だが、ようやく見つけた。別に探していた訳じゃない。だが、心の隅に引っ掛かっていた疑問に、答えが出る時が来たのだ。
キンはふっと微笑んだ。先ほどとは打って変わって、大人びた笑みだった。
「キミはボクの期待に答えてくれるのかな、ユーイチ?」
すきま風が、キン長い髪をかきあげる。キンの金色の瞳が、光を映して輝いた。
それからキンもその場を去った……。


「ルリ」
「何か用、キン?」
「“彼”を、見つけた」

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