捨て台詞の様に、お前を信用した訳じゃない……そう吐き捨てたグランはアキとカインを残し、古びた小屋を後にした。
残されたアキは、準備を整えたカインに目をやると静かに声を発した。
「グラン、あんなふうに言ってたけど……カインの事、心配してたんだよ。倒れたカインをアジトまで運んできたのもグランだしね……」
「別にどうだっていいさ。俺はあいつと友達や仲間になるつもりもないし、これ以上クライアントである、あいつやアキに迷惑をかけるつもりもない。報酬さえ貰えれば、俺はどう思われようが構わないからな」
迷いも、恐れも……感情さえも感じさせないカインの冷淡な物腰と口調は、アキにはどこか悲しげに映った。
カインは、ゆっくりと歩を進めグランが力まかせに吹き飛ばしたドアを跨いだ。
瞬間、目を指す様なまばゆい朝の日差しと共に、火薬が焼け焦げたかのような鼻をさす刺激臭がカインの鼻をかすめる。
そして、カインは目の前に広がる光景に目を疑った。
荒れ果てた大地は茶褐色に枯れはて、自身が身を休めていた小屋も、辺りに立ち並ぶ塔の様な建物や家々も全てが、くすんだ色の砂に埋もれていたのだ。
元あったであろう高さの半分近くまで砂で埋もれた建造物たちは、今の技術では到底、建造不能な建築技術が使われているようである。
「何だ……これは?」
カインの口から自然に声が漏れた。
「ふん、天下のヴェノム様はサンドフォールも知らねぇってか?」
その時、呆然と立ちすくむカインのすぐ横の埋もれかかった家屋の壁に腕を組み、もたれかかっていたグランが口を開いた。
「サンドフォール……?」
「ちっ、そんな常識も知らねぇのか?」
カインの質問に、眉を寄せ舌打ちをしたグランは、しかめた顔を一度カインに向けた後、自身の足元で風にまう茶褐色の砂を片手で拾いあげた。
「お前、これが何か分かるか?」
そして、その砂をカインに、ぐっと突き付ける様にしてそうグランは尋ねた。
「砂……だろ」
「違う……こりゃあな、人間が作りだした『死の灰』だ」
カインは首を傾げた。
「気が遠くなっちまうほど昔、その世界に生きていた人間は俺達なんかとは比べ物にならねぇぐらい頭が良かった」
言いながらグランは砂に埋もれた様々な建造物を見回した。