もうすぐ春が来る
あなたが生まれた春
一ヶ月前あなたへのプレゼントを買いに出掛けた
まだ春物の服を着るには肌寒くて
でも春をほんの少しだけ感じさせる暖かい陽気
あなたの事だけを想いながら必死で選んだ
何時間も掛けて何件も店を回って
少し汗をかきながら懸命に歩き回った
あなたにピッタリのプレゼントを見付けた時の喜びは大きかった
帰りの電車の中で疲れと安心感で眠ってしまった
部屋に戻って可愛く包装されたプレゼントを何度も手に取っては眺めた
あなたの喜ぶ顔を思い浮かべて顔が綻んだ
何だか楽しくて嬉しくて胸が高鳴って早くあなたに渡したくて誕生日が来るのが待ち遠しかった
だけど渡せなかった
突然のあなたからのさよなら
苦労して選んだプレゼントも私も
ぽつんと残されてしまった
悲しくて仕方なくなってクローゼットの一番奥にしまい込んだ
見るのが辛い
でも捨てられない
これを捨てれば自分の気持ちまで行き場をなくしてしまいそうで怖かった
せめて『おめでとう』だけでも伝えたかった
あなたが生まれたその日を心から待ち望んで
あなたが生まれて来たから私たちが出会えた奇跡を二人だけで祝いたかった
あなたの誕生日が過ぎたら忘れよう
きっと苦しいけど
きっと忘れられないけど
過去は振り返らないと決めたから
寂しさも薄れて行くはず
現状から逃げたくてしまい込んだ渡す事のないプレゼントも
これから何十年か経って忘れた頃に出て来た時
『あぁ、こんな頃もあったな』って懐かしく思い笑えるようになろう
過去を断ち切る為に前へ進む為にあなたの誕生日には空へ言葉を飛ばすんだ
『おめでとう、生まれて来てくれてありがとう』って