「隊長」
俺は下を向いたままボソッと言った。
去り際だけ見て誰もいないと思ったのか、手にはインベーダーゲームを握っている。
「んだよ…また文句か?」
「そうとって頂いて結構です。しかし、相手の人数などは」
詳細の記載されている書類を投げて寄越した。
「女房役のお前がやれば良い…俺は、お前がやると思ってる」
「いい加減過ぎます」
「…もう一度呼びだそうか?」
「お願いします」
戦闘は緻密に、かつ合理的にやらないと犠牲者が増えるだけだ。
なのにこいつはいきあたりばったりで、人任せ。
本当にダメ上司。
俺の事を女房役なんて言ってるが、離婚届けでもあるなら即離婚する。
「U小隊、各員隊長の部屋に再集合」
全員がゾロゾロ入って来る。
「また呼び出して済まない。明日の敵数は60人、天気は晴れ、湿度、温度共に良好、各自出陣の前にキッチリと水分を摂る事。以上。」
…以外と敵数が多い。
昔とは違い、国連に人数を申請し、決められた場所で30%が死ぬまで殺しあいをする。そして小分けされた小隊の人数や詳細を出陣前日に各隊に配布する。
銃弾などが無くなった時は悲惨だった。
殴り、首を締め、相手を泣き泣き殺すのだ。
まぁ聞いた話だが。
隊員達が帰る。
俺も、ボトルシップの残骸を片付けなければ。
その後筋トレなんかもしないと、T小隊なんかに格下げされたらボトルシップどころの騒ぎじゃないだろう。
ランク別でA〜Zまである。
精神的疾患や基礎代謝などを細かく調べられて、入軍時に振り分けられる。
Aの輩はただの特攻部隊だ。
頭数にすら入れられてない。
確かZ小隊は人数が一人だ。
日本刀でBからZまで昇格したらしい。
なんでも800人を一人でやったそうだ。
うちの隊長も隊長になる前はXにいた。
手榴弾を使うのが上手い。
いい加減な奴なのに。
俺は…あんまり上手くない。
何も秀でた物はない。
ただ、スナイパーライフルを戦場で使うだけ。
接近戦なんてリスクが高い賭けはしないんだ。