【3回表2死1、2塁】
カウント2ナッシング。
確かにさっきの球は浮き上がった…!?
本当に速い球は浮き上がって見えるなんてよく言うけれど、打席でそんなことを感じたのは初めてだった…
雪村が再び川浦にボールを返す。
雪村『ナイスボール!!』
(こういうのが天才って呼ばれるやつなんだろうな…)
打席に入っていながら、なぜか俺はそんなことをボーッと考えてしまった…
そして、あまりの格の違いに、ただぼう然とセットに入る川浦に見入ってしまった…
3球目…
ズバーン!!!
!!!
『ストラックアウッ!!』
今度はボーッとしていた俺の懐にズバッと決まる真直ぐ。
(しまった…)
川浦は俺の内角をえぐった瞬間、
『しゃあ!!』
と鬼気迫る表情で雄叫びをあげベンチに走って戻っていった…
ただバットを持ってぼう然と立ち尽くした俺に、雪村がポツリと
『凄いでしょ?ウチのエース。今まで試合で3点以上取られたの見たことないんですよ…』
と呟きベンチに帰っていった…
3者連続の三球三振…
川浦一人グラウンドに立ったことで流れや雰囲気がガラッと変わった…
これが天才なのか…
俺はあいつに比べたらどれだけ凡人なんだろう…
左打席で少し打てたからといって自信をもっていた自分が恥ずかしくてたまらなくなった…
俺はベンチへ帰り、守備に行く準備をした。
そこに曽我端さんがきて、
『馬鹿野郎。見逃し三振なんてもったいないだろうが〜!』
とメガホンで軽く叩かれた。
俺が『はい…すみません…』
と答えると
曽我端『まず同点に追いついたんだから、裏しっかり守ってけよ!』
ともう一度メガホンで尻をポコッと叩かれた…
俺は『はいっ!!』
と答えて守備位置に走った!!
そうだ!まだ逆転された訳じゃない!!
この回守って、それから川浦を攻略すればいいんだ!!
俺はこの回しっかり守ろうと心に決めた!