ハルはじっと目の前のWWを睨み付けていた。
横を沢山の敵が素通りしても、奴がピタリと動かなくなっても。
俺を無視しやがるのか?それが気にくわない。
こっち見ろよこっちを!
ヘタレ野郎ォ!!
……そう罵った瞬間、突然狂ったように襲い掛かってきたのだ。
しこたま肝を潰したハルは慌てて銃を構えた。
が、稲妻のような速さで迫ってきたダークキャットに一瞬で間合いを詰められ、銃を蹴り飛ばされた。
「なんつう速さだ!?畜生!?倍はある!〇い〇星めっ!!」
ダークキャットはそのまま振り上げた足を、踵落としに連携させるWW離れした体術を見せた。
ハルが再び肝を潰したのは言うまでもない。
「馬鹿野郎ッ!!」
ハルは思い切り敵の顔面を殴り付ける。黒い機体が弾ける。
「調子に乗るなよ」
空中で少しフラフラした相手は右手をスルリと掲げた。
手首から肘あたりまで折り畳まれていた巨大な刃物ががしゃっと音を立てて前を向いた。
確か近距離白兵戦を想定したナイフ。
通称「猫の爪」。
「上等だよ!」
ハルも機体に命じて近距離武器を装備する。
腰に下げた実刀。
「叩っ斬ってやる!」