両想い
今、俺はそれに気付いた。
観覧車という賑やかな装飾と中の静けさが良いバランスを保って回り続けている。これがロマンチックと言うのかとキョンが隣にいて初めてわかる。
途中で止めてしまっていた話が再開する
「キョン」
『ん?』
「俺、今まで付き合ってきた人は何人かいたよ。でも短く終わってた。人に愛情を与えるのが上手くないんだってほとんど諦めてたんだ。でもキョンと一緒にいてこんな気持ちになったのは初めてで上手く言えないんだ」
キョンはうんうんと頷き俺の目を見ている。
「でもわかる事があるんだ。俺はキョンと一緒にいたい。よかったら俺と付き合ってくれませんか??」
観覧車の中にその音が響いた。
観覧車の中の空間、不思議なもので一周してしまえばこの綺麗で二人の距離をグッと縮める時間が終わってしまう。シンデレラにかけられた魔法のような空間。
キョンの答えはこうだった
『…好き』
キョンは潤んだ瞳で言った。
『気になる人がいるって友達に送った時にはもうソウキュウが好きだったの。好きで仕方なくて。でも告白する前にもう少しソウキュウの事を知らなきゃって思ったの。もし悩みがあるなら支えてあげなきゃって』
キョンは俺の事を誰よりも理解しようとしてくれていた。俺の目からいつの間にか涙がひとつ、頬を伝い顎の先に向かっていた。
キョンはペコリと
『天然な私ですがお願いします』
と言った。
「こちらからもよろしくお願いします」
立ち上がりお辞儀しようとして頭をぶつけるアクシデントがあったものの、ちゃんと言えたあの言葉、告白。
その後、俺達は観覧車から降りた。
一人一人としてではなく、ふたり(カップル)としてだ。
どう変わったかって?
そりゃ鎖のように離れる事のない俺達の手が全てを語ってるだろう?
俺達は一緒に笑い、照れながら遊園地を後にした。
生まれたての恋人達を祝福し、そして羨ましそうに観覧車は俺達の背中を見下ろしていた。