☆雪の中で★
サイレンが鳴り響いた。
「あ…、5時だ。舞奈、私帰るね。レナちゃんはどうするの?」
心配そうに香織はレナンを見た。家がないと言ったレナンに誤解しているのだろうか。
「もしよかったら、うちに泊まる?」
「え?いいの?」
レナンは舞奈を見つめた。
「うん。うちの親アメリカ行っててさ。あと1年帰ってこないの。」
「…じゃあ、お願いします!」
「良かったねレナちゃん!じゃ、バイバイ舞奈、レナちゃん!」
そう言って、香織は帰っていった。
「あー!買い物いかないと!」
舞奈は立ち上がる。
「買い物?」
「そ!レナンも今日から一緒だったら食料がないとね!家が見つかるまではうちにいていいから。」
天使に家は必要ないんだけどな。
「確か、人間はお金で何かを買うんだよね?大丈夫なの?」
「うん。毎月かなりの大金を親が送ってくるから。あ、これ着て!寒いから。」
行こう、と言われてレナンは舞奈に着いていった。空は、雪がやんでいた。
「あーあ。雪、やんじゃった!」
「雪…?」
舞奈はレナンを振り返った。
「もしかして、雪が分からないとか?レナンって…記憶喪失?」
「違うよ。あたしは天使なんだよ。」
舞奈は、さらに不思議な顔をした。
「さっきから天使って…。レナン、まさか本当に天使じゃないよね?」
だから天使なんだってば!心の中でレナンは叫んだ。
「誰かぁ!」
女の人の叫び声。同時に、激しく響くかすれたような音。
舞奈とレナンはそちらを向いた。雪でトラックが坂道から滑り落ちている。その先には男の子が身動きできずに立ちすくんでいる。走っても間に合わない。
「ダメ!」
「れ、レナン!?」
途端にレナンの背中から翼が現れ、飛び立った。舞奈はア然とその光景を見ていた。ギリギリ男の子を救いだし、トラックは無人だったために少しへこんだくらいで助かっていた。
女の人は手で顔を押さえていたため、今のレナンを見ていないだろう。
しかし舞奈は、しっかりと見ていた。
「天使だ…。あたしの前に天使が降りてきた!」
そう言って舞奈はレナンを抱きしめた。
「ま、舞奈??」
天使だ、レナンは天使だ!と舞奈は繰り返している。
しかし、そんな二人を見ている者達がいた。
「メオ?あれが女神候補なのか?」
「ですね。」
空は曇り空だ。