俺達が付き合ったあの日から2ヵ月が経った。季節は冬を越え、北海道では桜咲く春が訪れていた。
仕事もしっかりこなしていた。あれからというもの、俺は残業は減り、定時でほとんど帰れるようになった。
俺達はその間、常にメールや電話をし連絡を取り合っていた。キョンのいる東京、俺のいる北海道は季節のズレがあって桜がこっちでは満開なのに東京では葉桜になり、外は20℃以上の温度を記録してると言う。
キョンは毎日ピアノの練習をしている。あの日みたくまた聞かせてくれないかと頼むと
『イヤー!前のは特別なの!、恥ずかしいんだもん』
うーん…。納得いかない↓↓
ワガママでもかわいらしいとキョンに胸がドキドキする新鮮さが俺にあった。
そんなある日の朝、キョンから電話が来た。今日から2連休なのに朝からどうしたんだろう?
寝ぼけながら電話に出る。
「もしも〜し」
『おはよう!今日はこれから〇〇の会場で夕方5時からコンサートなの』
「そうかぁ、キョンも演奏するの??」
『そうだよ!これから向こうに行ってリハーサルなんだ』
「…そうかぁ。リラックスして頑張ってね」
『うん、今日は調子いいし、いい結果になるかも!』
「…」
『ソウキュウ??』
「ん?あぁ、なんでもないんだ。俺も今日は休みだし洗濯するよ」
『そうかぁ頑張ってね』
とキョンは言って電話を切った。
家で洗濯をする
嘘
ある計画を思いついた。キョンの演奏を見に行こう。俺は急いで準備をし、車を出した。
コンビニのATMでお金をおろし、向かった先はもちろん飛行場
あの時以来、俺はキョンのピアノを耳でしか聞いた事がなかった。今度はこの目、この耳で聞こう。キョンに内緒で聞いてみよう。キョンの指先から流れる音をしっかり聞いてこよう。
外は春風が吹いている、春の匂いがして清々しい。
キョンは今頃、ソウキュウは洗濯をしてるんだろうと思ってるに違いないだろうなぁとある意味ドッキリ企画に近い気持ちで胸がドキドキしていた。
飛行場で空席を確認して航空券を買う。ロビーには様々な目的で東京に行くだろう人達がいる中で俺みたく彼女の演奏を彼女に内緒で見に行く人はいないだろうとドキドキはさらに加速していた。