あの日から、笹川に会った日から数日が経った。
「…ふぅ」
クラスメイトが騒ぐ教室でオレは一人ため息を吐く。
なんでか笹川の事が頭から離れない。あの後、笹川は本を読み終えると「じゃあね」と言って去って行った。
…ただそれだけだ。少し言葉を交わしただけ。
なのにこんなにも記憶に残ってしまったのはなぜだろう…?
心のもやが晴れないまま、放課後オレは1年2組の前にいた。
「なんでだ?」
と、自問してみる。でも答えは思い付かない。
「あれぇ?あ…きら君?」
「……」
オレの頭を悩ませる張本人が1年2組の教室から出て来る。
ここに来といてなんだか、本当に会うとは思わなかった。
「うちのクラスに何か用?」
「よ、用つーか…」
言葉が出てこない。自分でもここに来た理由がハッキリしていないのに。
「あ!もしかして僕に会いに来た?」
「えっ…」
オレの心臓はドキッとする。笹川はオレの戸惑いに気付かず、いたずらっぽく笑っている。
「あー!彰じゃん!!」
そんな時後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「…あ」
振り向くと最短記録の元カノが立っている。そういえばこいつも1年だ。
「この前はごめんね〜。ついカーッとなっちゃって」
「いや、それはいいんだけど…」
そう言った途端元カノがニカッと笑う。
「じゃあ、仲直りね〜!」
「お、おい!」
元カノ…仲直りしたから普通に彼女か?いや、そんな事はどうでもいい。とにかく、こいつはいきなり抱き付いてきた。
ハッキリ言って恥ずかしい…って、そんな事より!
「ささか…わ?」
…いない。
「ごめん、オレ行くわ!!」
「え、え〜?彰〜!!」
オレは無理やりこいつを引き剥がし、急いでこの場を去る。
生徒玄関を出て走って校門まで行くと、歩いている笹川の姿が見えた。
「笹川!!」
「へっ?」
人目も気にせず大声で笹川を呼び止める。笹川は驚いて間の抜けた声を出した。
「彰君…どしたの?」
「…お前が…急に帰るから」
「だって、せっかく彼女に会いに来たのに、邪魔しちゃ悪いでしょ?」
キョトンとして当たり前のように言う笹川。
「…違う」
そんな笹川に反論した。
「何がさ?」
オレは大きく息を吸う。
「オレは笹川に会いに来たんだ」
そう…さっきの自問の答えはこれだ…。