奈津美は次の日から、早速バイトに日々を費やす事に決めた。
決めてから、ある疑問が頭をかすめた。その疑問とは、なぜこんなにも早く結果が出たのかということである。
「……」
しばらく、首を傾げていたが、結局何も思いつかなかったので、諦めた。「まっ、いっか。雇ってくれるだけでもありがたいんだから。とやかく言うのは、やめよう」
と、浮かれている奈津美は、普段でも大きな声だというのに、さらに大きな声で独り言を言った。言ってから、まずいと思った。
理由は、母親には、隠していたかったからだ。
なぜ隠す必要があるのかというと、昔、奈津美は、学校から帰ってくる時に、もうすぐ家に着くころ、変態に襲われそうになったことがあるのだ。そのせいで、奈津美はしばらく、学校に行けなかった。奈津美の母親は引きこもっている奈津美に、何も言わなかった。自分から行くというまで、待っていたのである。
行くと言いだしたのは、その汚らわしい事件が会ってから、二週間ほど後のことだった。
奈津美が行くと言いだしたときは、安心と不安が一塊に、奈津美の母親を襲った。結局、奈津美の母親は不安に負けて、今でも、奈津美が外に行くのを警戒している。続