あたしは、愛していた…あの人を、誰よりも。
それこそ死ぬほど。
あの人は、あたしの想いに戸惑っているみたいだった。
怪訝な顔であたしを見つめ返し、首を傾げる。
まるで何を見ているのかわからないみたいに。
そんなこと決まってる。あたしはあの人の全てを見ていたい。
仕事をしている貴方。
電話をする時、長くて細い指先が書類を叩く。
嫌なことがあると眉をひそめ、嬉しいことがあると子供みたいに微笑む。
ああ、あなたが好き。
あなたが、あなたが全てなの。
あたしにとって、文字通りあなたは輝いている。
この想いを伝えたくて、あたしは貴方の手に触れた…。
あなたは驚いて、その手を引いた。
私はそれ以上の勇気が出ずに、立ち去った。
愛してるの。
貴方のその指があたしを苦しめるの。
あたしはぼんやりここに突っ立って、いつか貴方がここから去るのを見ていなければならないの?
いやよ。
いや!いや!いや!
それだけは出来ないわ。
例えば運命が歯車としてあたし達を引き裂いても…だとしても…あたしは逆らってみせる。
温かな貴方の頬に触れ、口づけし…。
あなたは悲鳴をあげた。みんなが貴方を見てる。
「あいつがいるんだ!」
あなたは叫ぶ。
みんなは怖いような、恐れるような顔で、何も言わない。
静寂のなか、あなたは笑った。
「確かにあいつは…俺が…この手で…」
ああ!とうとうあなたはあたしを認めた!
あたしは嬉しくてあなたにしがみついた。
あなたは青ざめて…あたしを抱くように自分を抱いた。
あたしはあなたを愛してるのよ…。
死んだって逃しはしない
あたしの首にあなたの指がからまったあの日、あたしは永遠を感じた。
あたし…あなた…
それだけの世界で
悪いことなんて何もない
そうでしょう…?