桜と僕と…

ゆうこ  2008-03-04投稿
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桜が嫌いだった。

うす紅色の花が雪みたいに降りそそいで僕のアパートに入り込むから。

安アパートに一人暮らしの僕は、それでもまめに布団なんか干したり。
そんな時でも桜は、お構いなしに飛んでくるから…帰って来たら家中花の絨毯で。
掃除、バイト、洗濯、料理、バイト、掃除って具合に、「掃除」の割合が増えてしまう。

目下自腹で編み戸を検討するけど…布団、干せなくなるしね。

だから、桜が嫌いだ。

そんなとき、僕は布団についた桜をはたいて、その手を止めた。

彼女も僕を見ていた。

ビンテージジーンズを履いて、ガム噛んで、髪はまっ茶色で、柄悪い…のに、僕は見てしまった。
綺麗な、二つのアーモンドみたいな目。
キラキラ光って、まるで…。

「なに見てんの」
って言うから、つい
「桜」
ってさ。君を見てる、なんて言えるわけない。

「ふぅん」
彼女のガムが、フーセンになって、しぼんだ。

「そこから眺めっていいわけ?」

僕は頷いた。
マヌケなくらい強く。

それからしばらくして、彼女は、僕の

「彼女」になった。


それから、また春。

僕は編み戸を買った。
桜の花びらはもう入らないけど、彼女がいる。

桜より部屋を散らかす僕の彼女。

僕は前より桜が嫌いじゃなくなった。


桜の絨毯は、それなりに綺麗だったけど、僕はもっと綺麗なものを手に入れた。

二つの光るアーモンド。
僕は桜が嫌いじゃない。
きっと…そのうち…

好きになるだろう。

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