キラキラ…
ほのぼの……
ロビーはまさに春の光りを浴びて眩しいがこの事ではない。
キョンは俺と付き合ってよかったって事をこのメールに綴ってくれたんだ。
このメールにすぐ返事をしたかったけどもう入場しなきゃと思い、会場に入る。
こういう場所にはやっぱり正装した方がとスーツで来てしまったが、周りの人達は以外とラフな格好をしてしまい、逆に浮いてしまった。
椅子は映画館にある折りたたみの赤い椅子だった、照明が観客を天井から薄い目をしてぼんやりと見下ろしている。動員数はざっと500くらいだろうとテキトーな感じて表現できるくらいのけっこうな広さだったが、会場してから10分くらいで埋まってしまった。俺はだいたい真ん中くらいに座った。周りはがやがやとした声や音が時間が近づくにつれ、徐々に小さくなり、5分前になると沈黙、おまけにはち切れんばかりの緊迫した雰囲気を出していた。
見ているこちらが緊張して肩が張りそうなくらいだ。
薄暗い照明がさらに暗くなり本番を迎えた。
人が出てくる。拍手が起こり、演奏者がお辞儀をし、ピアノを前にするとまた沈黙。
どの人も指先に機械がついてるのではないかというくらい精密で素早い動きを見せていた。激しい曲、悲しそうな曲。素人の俺にとってはこんな感じでしかわからなかった。そして最後の演奏になった。とうとう待ちに待った瞬間。
チラッと人影が見えた瞬間に拍手が起こる。
キョンは赤いドレスを身に纏い、ステージに立っている。
綺麗だった。
キョンがピアノの前に座った瞬間、観客席の照明は消え、ステージだけにスポットライトが一点、白い光をピアノに当てている。
キョンの演奏が始まった。ゆっくりと指先が動き出す。両手が白と黒の鍵盤を包み、奏でる音はキョンの心のままだった。優しく、キラキラしていた。
白い光を浴びるキョン、暗闇の中にいる俺達にゆっくりと光を与えている感覚だった。
そしてキョンの演奏が終わった
周りはスタンディングオーベーション。鳴り止まない拍手の中でキョンは舞台を後にした。
アンコールがかかっている中で俺もこの会場を後にしようと階段を上がり、ロビーへの出口に向かった瞬間、歓声が沸いた。誰かがアンコールに応えるようだ。俺は振り向かず出口のドアノブに手をかけたその時だった。
(失礼ですがソウキュウさん、ですね?)