地下とは思えないほどの光が、空間を白く染めている。
オレの体内時計は、ほぼ正確な時を刻んでいるため、おそらく今は朝の6時頃だろう。
市場が開かれ、買い物に出てきた客で、地下都市INのNo.8(エイトロー)はごった返していた。
オレはどうやら眠っていたらしい。けだるさに包まれた身体を起こすと、首にかけていたロザリオが、小さな金属音を奏でた。カウンターの奥では、マスターのジキルが大きないびきをかいている。
昨日飲んでいたウイスキーの氷は完全に溶けていて、ただの水と化していた。少し迷ったが、咽の渇きに耐えられず、生ぬるい水を飲み干す。
一つ息をつくと、アルコールの残り香が鼻孔をかすめた。