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聖人と付き合って1カ月が過ぎていたー。
放課後に3-5の教室へ行く事はー
いつの間にか、
あたしと聖人の日課になっていたー。
あたしと付き合う前はー
聖人は、ここまで頻繁に3-5の教室へ行く事は無かったと思うー。
人と群れで行動する事を好まないしー
わいわい騒ぐ事も苦手だった聖人がー
放課後、いつも3-5で親友のサトル君を交えて、取り巻き達と雑談するー。
あたしは聖人の彼女ってだけで、
その仲間に入れてもらえたけれどー
三年生の先輩達はー
やっぱり、あたしよりずっと大人びて見えたー。
あたしが一際目を引いたミズホさんはー
初めて見たトキから同じ女性としての魅力溢れる、憧れのヒトだったー。
あたしもミズホさんみたいにー
大人っぽくなりたいー
色っぽくなりたいー
可愛くなりたいー
いつもそんな思いでミズホさんと接している自分が居てー
いつの間にかあたしはー
“ミズホコンプレックス”を持ってしまっていたー。
ふと隣を見るとー
聖人が相変わらず、サトル君と車やバイクの話で盛り上がっているー。
勿論ー
あたしのコトはほったらかしでー(笑)
あたしは話に付いて行けなくてー
そんなあたしに、
いつも気を遣ってくれたのはー
あたしがコンプレックスを持っている、ミズホさんだったー。
『奈央ちゃんの髪って、見事にストレートで綺麗な黒髪よね。』
ミズホさんが、あたしのセミロングの黒髪を見て言ったー。
『そんな事ないですよ。あたしは、ミズホさんの、茶色でふわふわの巻き髪に憧れちゃいます。』
それは本心だったー。
だってー
あたしの髪は、いわゆる三重苦だったからー。
硬くてー
太くてー
量が多いー(笑)
『ミズホさん、あたし縮毛矯正もしてるし、シャギーとレイヤーも多めに入れて、かなりすいてもこのボリュームなんですよぉ。』
憎き、あたしの三重苦の髪ー。
絶対、風に靡かないしー(笑)
『あたしはコシが無くて、猫っ毛だから、ボリューム出すのに毎日苦労よぉー。』
そう言ってー
ミズホさんが、ふわふわの巻き髪を、指先でくるくると巻きつけたー。