集中豪雨と化した夕立に晒された廊下の中で―\r
第三中学校生徒会長と副会長は沈黙を保ったまま対峙した。
やがて―\r
『教えて下さい梅城会長』
うつ向き加減に港リリアが沈黙を破った。
『あなたは本当に―何をしようとしているのです』
梅城ケンヤは少しだけ驚いた表情を示した。
が―\r
『頼む』
さっきより少しだけ深く、彼は頭を下げた。
『私に反対し・矛盾を突き・不備を改め・行き過ぎをいさめる―これはあらゆる組織に無くてはならない機能だ。君だけにしか出来ない能力だ。これからも何かあったらどんどん諌言してくれ。だが今回は―私を信じろ』
梅城ケンヤの言葉には深い信念が込もっていた。
『私がイジメを止める。イジメグループを撲滅させる。必ずやる―これだけは絶対約束する。だから―私を信じろ』
最早論理ではない。
だが、それはあらゆる《正論》すら叶わない迫力に満ちていた。
『会長―』
隠し切れないたじろぎと動揺に、港リリアはそれ以上反論出来なかった。
少なくとも、あれだけの力とカリスマを手に入れるのに、梅城ケンヤは確かにふさわしい人物だと言う事は認めなければならなかった。
『済まない―君には色々苦労をかける』
それだけを言い残して、梅城ケンヤは廊下を歩み去って行った。
蛍光灯の周り以外はすっかり真っ暗となってしまった廊下に取り残されて―\r
港リリアはしばし呆然と立ち尽していた。
だがやがて―\r
『私は―あなたを裏切るのかも知れないのですよ』
小さく彼女はつぶやいた。