及川先生は驚きもせず優しく話を聴いてくれた。それから抱き締めて「無理しなくていいんだよ。泣きたい時は泣いてすっきりしろっ!今日は胸を貸してやろう!おやじで悪いな!」と言われ、あきなは子どもみたいに思いっきり泣いた。いつもの先生とは違った。
「よしっ!こんだけ泣いたんだからもうこれ以上泣くことはないな!お前もちゃんと向き合ってお母さんの幸せも考えてやらないとな!お前の親なんだから結構悩んで打ち明けたと思うぞ。」
夏の暑い日なのに抱き締められたぬくもりは心地好くてここでは守られているんだと思った。
その後はどんなに会っても、どんなにはなしても先生と距離は縮むことはなかった。縮んではいけないこともわかっていた。あきなはその日から気付くとカレの背中を眺めていた。その視線は熱く恋する視線とはちょっと違い、温かくて大きなその人は永遠の憧れなのだろう。