人に嫌われるのが怖かった。
私はそんな、普通の女の子だった。誰だって人に嫌われるのは嫌だろう。だから、我慢した。
嫌だと思う事も、いいと思う事も、基準は
「友達がどう思うか」
それだ。 そればっか。
そんな毎日の中で、いきなりそれは起こった。
教科書がない。
上履きがない。
…誰も、口を聞いてくれない。
イジメ…?
信じられなかった。小学校でも中学でもあったことなかったのに…。
私は一人になった。
それまで群れていた友達たちは、私のことを避けるようになり、それはいつしか普通の日常風景となった。
初めて、私は一人だったことに気付いた…気付いてしまった。
孤独は前からあったんだ…今、それが映像化されているだけで。
私はずっと一人だったんだ。
思ったら泣けてきた。
しらないうちに涙が零れて止まらなくなった。
自分の孤独が体中をぐるぐる廻って行き場がない…辛い…苦しい!
泣いている私を見て、クラスの子達が笑う。
目の奥が煌めいている子…笑いながら口端を震わせる子…嫌なものを見るように眼を逸らした子。
私だって、このなかの一人だった。
私にこの人達を責めることなんて出来ない。
私は死にたい、と思った…いや、死ぬ、という言葉じゃなく…
消えたい…と。
私の足は屋上へと向かっていた。
家族は泣くかな…?
妹はきっと困るだろうな…宿題、教えてあげられなくなるから。
お母さんは妹がいるからきっと平気。
お父さん…話したこと、たいしてないから、平気だよね?
一歩、一歩、空の広がる屋上へと続く階段。
美人でも賢くもない、誇れるもののない私が気付いた孤独。
ひとつ、ふたつ…。
青空!
風が通る。
雲は白くて、秋の始まりの冷たさ。
両手ひろげて、飛んで行きたい。
邪魔なフェンスをよじ登る。灰色の箱ひだスカートが風でバタバタ煽られる。なんだか楽しい。
とうとう縁に足を降ろしそのまま足をブラブラさせて腰掛けた。
不思議。覚悟すると怖くないのね?
水色の空気吸い込んで、立ち上がる。
「ちょっと」
飛んでいこうとした瞬間に、呼び止められた。
なんか道でも聞くみたいに、普通に。
振り返ったら、少年がいた。
面白いものでも見るみたいに、笑っていた。
「あんた、そっから死ぬつもり?」
私は…黙って頷いた。