僕らは大人になって、それぞれの道を歩き始める。それぞれの道で、その場所で、つまづいたり立ち止まったりするだろう。
そんな時、振り返ってみればいい。そして、思い出す。
僕らのいた あの場所と、僕ら9人の仲間のことを…。弱小チームの少しずつだけど、成長できた…あの日々のことを…。
僕らは、弱かった。とは言っても、全く勝てない訳じゃない。
ほんとに野球の好きな奴らの集まりだった。しかし、はたから見れば、のほほんとした、あまりガッツを感じられるチームではなかったんだろう。
一つ上の先輩チームは、市内でも指折りの強豪チームだったから…『それに比べて、お前たちは……。』というのが、大半の大人たちの印象だったろう。
あれは、11月の中頃の、一晩中冷たい雨の降り続いたあとの、試合だった。いつもは、ベンチか、ベンチの外で応援ばかりだった僕らが、久しぶりに、この9人で試合をする。させてもらえる。…なのにだ。3−6で、惨敗。それも、勝てて当然の相手にだ。応援に来ていた親の怒号、落胆した顔、昨夜の雨で出来た水溜まりでグチャグチャになったスパイク…どれをとっても、最悪だ。
でも、ここからだったんだ。
ここから始まったんだ。
このどん底からの、ゆるやかな僕らの快進撃が始まったのは
つづく