入道雲が空の青によく映えている
蝉の声
かすかに聞こえる川のせせらぎ
頬をなでる爽やかな風
僕が毎年夏になるとやってくるのはおじいちゃんの家があるこの山。
僕は毎年全てを包み込むようなこの山で一日を過ごしていた。
特に何をするわけでもないけれど、空を泳ぐ雲や自由に飛び回る鳥達を眺めていた。
そうゆう時間がすごく好きだった。
ある日僕は山のふもとに小さな小屋を見つけた。
こっち側に来たのは初めてだったから知らなかったのだが、川がすぐ近くに流れているし、木がいい具合に木陰を作っていて、きもちのよい場所だった。
その日からそこが僕のお気に入りの場所となった。
そうして小屋の近くで時間を過ごしていると、突然女の人が出てきた。
僕は驚いて小屋の影に隠れた。まさか人が住んでいるなんて思わなかった。
その女の人はゆっくり川の方に歩いていき、川のふちに屈みこんだ。
両手で水をすくい、ゆっくり口元に運ぶ。
雫の伝う白くはかなげな手。潤いを帯びた薄桃の唇。
その美しさに見とれ、無意識に近づいていた。