もう一度君に

そら  2008-03-08投稿
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僕に気付いたのか、彼女はゆっくり振り返った。 

彼女の姿は静かに降り積もる雪を思わせた。

一瞬にして目を奪われる不思議な美しさ。 

僕はやっと口を開く。
「君は誰。」


彼女は何も答えなかった。
何も話さなかった。 

僕はそれでよかった。 
それから毎日彼女の元に通ったが、ただ隣にいるだけでよかった。 

それだけ彼女は魅力的だった。 

時々彼女は僕を見て微笑みかけた。
それだけで彼女が感じることが伝わってくる気がした。 

なぜ彼女はここにいるんだろう。 
なぜ僕はこんなにも彼女に心奪われるんだろう。 

そんな疑問も彼女に会うと全て忘れた。 

彼女の存在が全てだった。

彼女の手を握ってみる。 
見た目以上にか細い手。 

僕の心に初めての感情が芽生えた。
彼女を守らなければ。
僕は彼女を抱きしめた。 

「夏が…夏が終われば」

初めて彼女の声を聞いた。透き通るような美しい声。

とめどなく流れる彼女の涙をぬぐうことも出来ず僕も泣いていた。 

彼女の苦しみが痛いほど伝わってくる。
僕は全てを悟った。



次の日そこに行くと思った通りの光景が僕を迎えた。





そこには彼女も 
小屋さえも 
無かった。



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