想像の看守 ?―?

ユウ  2008-03-08投稿
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ルリは光の中に立っている者に気づき、パッと表情を明るくした。
「キン!」
そこには、まるで剣のようにスティックを構えたキンが立っていた。キンは構えをとくと、にこーと穏やかに笑った。
「何してんのさ?ルリらしくないなぁ。こんな奴ちゃっちゃと捕まえなきゃ」
「ごめんなさい。ちょっといろいろあって――」
呆然とこっちを見ている裕一に気づくと、キンはなるほど、という顔になった。
「ユーイチに会ったんだね。そりゃ、びっくりして動けなくなっちゃっても仕方ないや。ボクの言う通り、ダイダイにそっくりだったでしょ?」
ルリは少し複雑な顔になった。
「え、ええ……」
「……」
裕一は改めて彼らの姿を眺め、奇妙な違和感に包まれていた。さっきはとにかくこの女――ルリを助けることに必死で、化け物が出てきたことすら理性的に考えられてなかったのだ。
(……こいつら、マジで何なんだ?)
がうぅううっ!!
獣の声につられてそちらを見ると、金色狐が化け物の体を食い破っている所だった。体を覆う触手を一本食いちぎるたびに、血しぶきと肉片が飛んで、化け物は恐ろしい悲鳴を上げている。そのあまりに無惨な光景にぞっとなって、裕一は慌てて目を背けた。
「あの……」
下からおずおずとした声が聞こえて見下ろすと、相変わらず裕一の肩を借りていたルリが気まずそうにもじもじしていた。
「私はもう平気だから……離してくれる?」
裕一ははっとして、急いでルリの腕を肩から外した。
なんとなく気まずくなって、二人の間に沈黙がおりた。キンは空気が読めないのか、あえて読んでいないのか、何食わぬ顔でこっちへ歩いてくる。
「ほら、ルリ!」
キンは床に落ちていたスティックを拾うと、ぽんっとルリに投げた。焦って受け取ったルリを尻目に、キンは裕一に向き直った。
にっこり笑って、何を言うのかとおもえば、
「キミも流石に、これにはびっくりした?」
まるでイタズラに成功した子供のような口振りだった。
「…!ああ……」
ホッとしたこともあって、裕一は素直にうなづいた。やーりぃ!とか意味のわからないことを言ってるキンがおかしくて、気づいたら笑っていた。
……久しぶりな気がした。こんな風に自然に笑ったのは。
先ほどの狐が、化け物をすべて食べ終わったらしく、口まわりに血をつけてトコトコとキンに走り寄ってきた。

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