《翌9月15日・私立K学院生徒会役員会》
『そうですか遂に決まったのね』
役員会議室は同校生徒会メンバーと他校からのオブザーバーとで一杯だった。
主座と言っても、他と同じ折り畳み机にパイプ椅子に過ぎなかったが―そこに着いた九重モエは憂慮に顔を曇らした。
昨日とは打って変わって残暑まみれのかんかん照りだったが、目先に与えられた事態は、その程度では彼女達の心を明るく出来るとは思えなかった。
第三中学校・東京都Y区私立T2学園中等部に宣戦布告
並びに第三中学校生徒会長梅城ケンヤ・同盟諸校に共同出兵要請―\r
朝一でいきなり公表された知らせがこれだ。
『今向こうの校内掲示板を確認しましたが、やはりそうみたいです』
卓上で手際良くノートパソコンを操作しながら、霧島ユウタも同じ事実を告げた。
『何を考えてるんだか』
九重モエの隣で副会長・安東タロウは両手を挙げた。
既に三年生だが、その経験を買われてモエに請われてその座に就いた人物だ。
『隣の区の凶悪校にちょっかい―いや、全面戦争か―しかも他校まで巻き込んでとは』
そして、腕を組んで安東タロウは首を左右に振って見せた。
『まるで東京中の学校に戦争しろと言ってる様じゃないか』
『しかも、第三中学校生徒総会は全会一致で賛成したとか』
ポニーテールの二年生・渉外委員長青木ワカナが後を継いだ。
『一体どんな詐術を使ったのでしょう―我が生徒会も是非とも参考にしたいものですわ』
『だがまあ、これはこれで面白い』
施設管理委員長・船木カズオは別の見解を持っている様だった。
『10中8・9、梅城ケンヤは負けるでしょう―あるいは死にますよ。仮に生きて帰っても、彼に生徒会長の椅子は残っていない』
集まった一同はみなカズオの意見に賛意を示した。
ただ二人、九重モエと霧島ユウタを除いて―\r
『おや?何かあるんですか会長には?』
その様子を目ざとく見抜いた安東タロウが九重モエに尋ねてみた。
『梅城ケンヤの構想はまだ分かりませんが―』
ためらいながらもモエは考えを述べた。
『少なくとも彼は何の考えもなく戦争を仕掛けるとは思えないのです。必ず何がしかの勝算をもっている筈です』