真弥さん、泣かないで…。
僕がいつも側にいます。
小さな白い手を
そっと撫でる。
涙をいっぱい流した頬に
そっとキスをする。
「ありがとう。りょう君。」
真弥さんはきゃしゃな体で
僕をギュッと抱締めた。
僕はこの上ないくらい
幸せだった。
真弥さんの
匂いが好きで
真弥さんの
温もりが好きで
全てが好きだ…。
今だけは僕だけの真弥さんだから…。
今二人だけのこの時間が幸せ過ぎて怖いくらいだった…。
もう少し僕が大人だったら。真弥さんを守れるのに。
僕は窓の外に目を向けた。
もう外が明るい。朝だ…。
「仕事行かなきゃ。」
真弥さんは僕から離れて鞄を手にした。
「行かないで」
そう僕は言ったけど真弥さんはコートを羽織った。
「行かないで」
そう僕がまた言うと真弥さんは困った顔をした。
「いい子で待っててね。行ってきます。」
行ってしまった…。
僕は真弥さんの温もりがまだ残るソファーに体を埋めて泣いた。
僕が食べ残したドックフードが虚しく日を浴びて光った。