『…』
恐怖に震え出した手を抑えながら、その写真を机に裏返しに置いた。
気持ち悪い感じがしたので気を紛らわそうと、音楽をかけた。
コンポから出される素晴らしい音色を耳でとらえながら、掃除の続きを始めた。
しかし、数分後。
…ザ…ザザー
『あれ…』
窓を拭いていた手を止めて、急にノイズが鳴ったコンポを調べる周一。
『新品のCDなんだけどなぁ…』
とりあえずほっといたら直るだろと楽観的に考え、窓を拭こうと思ったその時。
背後に何かの気配を感じた。
『……』
急に部屋が寒気に包まれた気がした。
強烈な視線のようなものを背後から感じた。
恐怖に固まっている周一は、勇気を出して振り向くことにした。
バッ!と素早く振り向くが、そこには何もいなかった。
『…気のせいかな?』
ふと、目を机に向けると、さっき裏返したはずの写真が表向きになっていた。
あの、顔の無い女の子の姿が、周一の目にあらためて入った。
『…』
言葉では表せない、とても気持ち悪い感じがまた襲って来た。
相変わらずコンポはノイズを発している。
部屋から出ようという考えは浮かばず、まるで操られているように窓を拭き始めた。
『あれ、曇ってる』
あんなに喜んでいた太陽も、これでは不機嫌になってしまう。
穏やかな気持ちに戻りかけたこのタイミングで、また寒気が襲って来た。
さっきより強力な、体を縛り付けるような感覚。
背中と額を伝う汗が、服をジワジワと湿らせていく。
『(…何か、いる…)』
窓の方をを向いている周一は、運が悪い事に窓に自分が写っているのに気付いてしまった。
動かない体の肩に、白い何かが乗ったのを、窓に写った自分を見て確認した。
ゆっくり肩に姿を現すそれは
『(……指だ…!)』
小さな指だった。
姿を現しきったそれは、同時に、次に何が現われるかを周一に悟らせた。