しかしその瞬間、部屋のドアが開いた。
それと同時に指も消えていた。
『周一…どうかした?』
何度呼んでも返事がなかったから心配になってきた母親が、強張った顔の周一に問い掛ける。
『う、ううん。何でもないよ(あれ…鍵は閉めたはずなんだけど)』
『あら、そのCDお母さんの好きな歌手のじゃない。』
部屋に流れているそれは、周一の母親が大好きな歌手の新作だった。
緊張したままの周一をよそに、母親が机の上にある写真に気がついた。
『母さ…!』
見るな、見てはいけない。そう直感的に、本能的に感じた周一が母親を止めるように言った。
しかし遅かった。
『…』
『その写真…』
母親が驚いた様子で写真を見ていた。
『ねえ周一、この写真…どこにあったの?』
『段ボールから、落ちてきた』
『……そっ、か』
その存在を知っていた、自分も恐怖を味わった、そう周一に告げるように言った。
『母さん、この写真…』
『ごめんね周一』
『え…』
『だいぶ前にね、お母さんもこの写真を実家で見たの。その先は…わかるよね』
『…うん』
『その後ね、お父さんと一緒に裏山に捨てに行ったの。誰も来ないような茂みにね。』
『でも、何でここに…』
『それはお母さんにも…でも、一刻も早くその写真を処分する必要があるわ』
『どういうこと?』
『その写真はね、見てはいけないの。』
そこまで話すと、母親は写真を封筒に入れて、家を出ようとした。
『待って母さん、どこに行くの?』
『こんどは燃やすの、二度と、誰の目にも入らないように』
その様子から、自分よりよほど長い間この写真に恐怖を味あわされていたことがわかった周一は、もう何も聞かなかった。
『…それで、どこで燃やすの?』
『公園前の神社で、お坊さんに頼むわ』
『もう夕方で暗いけど、大丈夫なの?』
『この写真を見た後、夜眠れる?』
『……』
その、凄く怖い一言に決心した。自分も神社に行くと。