古い写真5

瓠月  2008-03-09投稿
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母親は、声にならない叫びをあげた。


血管が止まりそうなくらい真剣ににぎりしめる女の子の両手は、物理的な声をあらわしていた。

しかし、母親は右手に掴んでいる封筒を左手で素早く取ると、周一にそれを投げた。


『神社へ早く行って!』


母親の覚悟が伝わったのか、周一は迷わず神社の方へ走っていった。




母親と写真の二人が残されたそこに、警備の人が自転車の明かりをチラホラさせて近づいて来た。
それに気付いた二人は、手を繋いでスゥ…っと、消えた。


一人暗闇に残された母親は、痛そうに右腕をさすっていた。

『大丈夫ですか!?』


自転車の明かりに照らされた母親は、警備の人をじっと見ていた。







周一は前方で激しく揺れる懐中電灯の明かりを頼りに、神社へ走っていた。

『…あった!鳥居!』


神社の入口とも言えそうな鳥居の下をくぐり、ようやく神社へ着いた。


『神主さん!神主さん!』

切らした息で叫ぶが、一向に神主が出てくる気配はない。


『(…母さん)』

肩を撫で下ろし、手に持った封筒を見つめた。


背後からザッザッと砂を踏む音がしている。


『……』

周一は地面を殴った。

背後の足音が一番大きくなった所で消えた。


『…』

あの二人だ、と。ゆっくり立ち上がる。


『…うっ……!』

立ち上がり振り向こうとした時、小さい白い手が周一の首に伸びた。

力無く、反射のように首元へいこうとする周一の腕は、大切に持っていた封筒を砂の上に落とした。

真っ黒な顔が、周一の首を締めている。
落ちた封筒を目を下にして見ると、男の子が取ろうと腕を伸ばしていた。

『や……めろ…!!』


しかし、白い手がギリギリと首を締めている。


何でだろう、何でたった写真一枚でこんな思いをしなくちゃいけないんだよと、周一は最後に考えていた。

<…!>


『…ゲホッ……ゲホッ』

急に首を締めていた力が無くなった。

霞む目で何がどうなったのかと振り向くと、あの男の子と女の子が苦しそうにしていた。



そして、こちらに黒い眼差しを向けながら消えていった。

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