『分かったわ貴方に任せましょう』
霧島ユウタの提案に―\r
九重モエは賛意を示した。
『ふん、君がそんな物好きだったとはね―何があっても私は知らないよ』
一方、副会長・安東タロウは不満が収まらない様子だったが、反対はしなかった。
東京都Z区立第二中学校生徒会長・大隈リキとは一体何者なのか?
役員会が終り、九重モエは霧島ユウタのみを伴って会長室に戻った。
『大隈会長は第二中学校二年生・小学校高学年から一帯ではかなり名の知れた札付きの不良でした』
会長卓に着いたモエに、霧島は立ちながらそう説明した。
先の役員会で、彼はいち早く大隈リキの情報をパソコンで調べていたのだ。
『腕っぷしとずる賢さでのし上がり―遂には会長の座を手に入れた人物です』
その話が本当なら―\r
とても信用出来る相手ではない。
『知っているわ、ある程度ね』
今や第二中学校生徒会はリキによって集められた近隣の不良達で固められてしまっている。
だが―大隈リキはただの不良ではないみたいだった。
『彼は腕っぷしの立つ連中を集めて、生徒会を強化しましたが、自分は単身であちこちの学校に顔を出しては今みたいに忠告したり、時には争いの調停を引き受けたりしてます』
不思議な男だった。
一応は穏健派陣営に属しながらも、好き勝手に振る舞い、言わば独立勢力の主となっているのだ。
『きな臭い男ですが―信用出来ます』
霧島ユウタはそう請け合った。
遠慮会釈ない態度・歯に絹着せぬ物言い・傍若無人な振る舞いと、とかく欠点の多い男みたいだが、そこには裏表はないみたいだった。
その事を、霧島ユウタは見抜いた。
そして当然、九重モエも見抜いていた。
『これから情勢はますます先行不透明となりましょう―使えるカードは一枚でも多い方がよろしいかと』
『切味が良すぎて持つ方の手が怪我するかも知れないけどね』
冗談めかしながらも、モエは霧島の考えが正しい事を認めた。
そんな事よりだ―\r
『我が穏健派は今回は動かないわ』
今の段階では大隈リキより遥かに重大な問題は幾らでもある。
『第三中学校は兵力増強に励んでいるし、この前の組織改革で学内に十分な人員を割いたみたいですしね』