世には、「終末無き始まり」ということがある。
歴史の流れを創ることは、まるで同じことの繰り返しのようだ。
世界は、悲壮と絶望の塊だ。一見、夢を売るかのような華やかな街も、中身は人間の儚さや脆さによって創造された、言わばただの「逃げ場」ではないか。
男は、そんな時代の、そんな街にたどり着いた。
わずか三十年の人生のほとんど、自らぼろ雑巾のように扱ってきた。度重なる戦で幼くして家族を失った。たった10才の頃だ。それから安堵の地を求めて旅に出た。最初は、あまりにも若すぎたせいもあり、「希望」を捨てずにただひたすらに歩いた。
しかし、視界に入るのは、人間の死ばかり。餓死する者、兵士に嬲り殺される者、狂ったように焼身自殺する者……。男は、自分も含め、世の中は絶望に満ちていることを知った
己が今生きているのは、運が良かったからなのか、それとも、運が悪かったのか……
それでも、僅かな希望を胸に、世界にとって最後の楽園のようなこの街に来た。
男は、まるで汚物の集合体のような姿で、夜の街をただずるずると歩く。
人々はこの街を【エルドラド(黄金郷)】と呼ぶ……