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「俺は知ってます」スパイクの紐を結びながら、眞野が言った。「神崎サンが先生を大好きな事。それから…」鈴宮も隣で黙ってスパイクをいじっていた。
「その想いが、凄く辛いって事も」
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何してるんだろう。何だか不安だ。惹かれる様な拒否されている様な不思議な感覚。
すると二人がサッカーゴールの前に並んだ。
背が高くて、瞳は優しい先生。彼の口がそれを告げるべくはっきり動いた。
何故だろう
その時だけは…
風が吹かなかった。
「嘘」
二人は一定の距離に離れた。先生がゴール前、眞野はボール前に立った。
私はその場に崩れ落ちた。