しかも梅城ケンヤの留守を預かるのは―\r
港リリア―\r
副会長と内務委員長とを兼ねる彼女がいる限り、隙を突くなど不可能だ。
そう、普通に考えたら不可能な筈なのだ。
だが―\r
九重モエは知っている。
知っているなんて物じゃない。
重大な事実を、その港リリア本人から打ち明けられ―\r
更に協力を要請されているのだ。
裏切り・謀反、そう、クーデターだ。
だとしたら―\r
梅城ケンヤが主力を率いて撃って出た時こそ最大のチャンス。
多数の守備隊に、穏健派からの援軍を期待出来る港リリア達教員連合にこのチャンスを見逃す理由がない。
梅城ケンヤは敵の大軍の中で孤立する。
前方の不良校と後方からの教員連合に挟まれて、梅城ケンヤの破滅は確実だ。
大義名分ならばいくらでも作れる。
港リリアの能力なら、その位造作もない事だ―\r
あの時―\r
港リリアが和平を口実にこの陰謀を持ち込んだ時の事をモエは思い出す―\r
十分な勝算を説いて提携を進めるリリアにモエは言ったのだ。
確かに梅城会長のやり方・考え方に問題があるのは私も認めます―\r
ですが、【目には目を】ではやはり同じ事―\r
それに、教員連合の面々が本当に学校の再建を考えているのなら他校の兵を借りてまで流血を望まない筈―\r
教員達はリリアさん、貴方をすら利用しているのかも知れないですよ―\r
こう直言された時の港リリアのはっとした表情は、モエの目に焼き付いていた。
『いずれにしても第三中学校自体は磐石でしょうな―でなければこんな大々的な遠征を企画出来る訳がない』
会長卓でひとしきり考え込むモエに、霧島はそう予想を語った。
『そうとも限りません』
『はあ?』
会長の答えの以外さに、霧島は呆気に取られた。
『霧島。改革派同盟の出兵計画を急ぎ調査して下さい。特に出兵日時と兵力は出来るだけ正確に』
『それは構いませんが―まるで我々も戦争に加わるみたいじゃないですか?』
霧島ユウタはいぶかった。
『私の予想が正しければ多分何も起きません。ですが―世の中には予想を越えた偉人もいれば愚か者もいるのです』
港リリアは信念があって謀反を企んでいる。
だが、彼女の率いる教員達が同じ思いを共有しているとは限らないのだ。