私はこんなに欲情しているの。と示すように赤い口紅をつけて家を出る。
それはエレベーターに乗ると私の唇から彼の唇へ。
彼の為に色を選んだのに唇はすぐに裸にされる。
一緒にいる時間はずっと唇は裸のまま。
ホテルのソファーに長身の体をおさめて脚を組み私を待つ。裸の唇で『今日はありがとう…またね』の離れ難いキスをする。
そして口紅をひく。
彼は私の髪に煙草の匂いを、私は彼のYシャツに香りを残して、それぞれの居場所に戻る。
彼に会うために口紅をつけるのではなく彼に剥がしてもらいたくてそうしているのだと気付いた。