灼熱の陽射しが水着だけの体をジリジリと焦がす。真っ黒に日焼けした僕は焦燥で燃やされている。人気のないプールはシンと静まり、鏡のように真夏の青空を写している。
プールサイドには僕と先輩しかいない。先輩の高校最後の夏休み。僕は暴走した。好きだと打ち明けた。
太陽を背に立つ先輩は眩しく輝いている。
「なんだ、お前ホモか」
先輩の一言に僕はズタズタに引き裂かれる。
「すいませんでした」
慌てて逃げ帰り、泣きに泣いた。涙は枯れることなく、次から次へと溢れ出た。水泳部を辞めようと思い、日が暮れてから荷物を取りに戻った。
プールは青紫色に染まり綺麗に澄んでいた。
部室のドアノブを回した途端、息を飲んだ。人の荒々しい息遣いが、真っ暗な室内から漏れてきたのだ。ズボンの前が痛いほど膨らんだ。
裏窓へ忍び寄り、そっと手をかけて中を覗いた。ふたつの褐色の裸体が絡み合い、ひとつに交わっていた。
僕は確かに先輩の匂いを嗅いだ。僕は確かに先輩の喘ぎ声を耳にした。僕は確かに恍惚の顔で口づけを交わす先輩を目にした。僕は顔をクシャクシャにして泣いた。
でも、それでも、僕は、先輩のことが、嫌いにはなれないのだ。