* * * * *
「はぁっ…」
一人の帰り道、思い出してまた溜息。
理由は二つ。
一つはあの馬鹿のこと。…馬鹿、てのは…まあ言わなくても分かると思う。
もう一つは…
あたしの想い人、“雲英 龍希(きら たつき)”。接点0で会話も極少数。
俗に言う“一目惚れ”。
初めて会ったのは、図書室。
『えっと……』
彼はオロオロしながらなにかを探していた。
普段はおとなしくて、たまに笑う顔がとても綺麗で、自分を乱すことのない人。その彼が少し焦ってなにか探していた。
『……なに、探してんの?』おもいきって聞くと、少しキョトンとしたあと
『…料理の本…明日の家庭実習でなにつくるか決めてないから』
少しだけ低いトーンで答えてくれた。
こっちよ、と料理の本がある場所を教えてあげた。(ちなみに雲英くんが居たのは文庫本置き場で、料理方面と凄く離れてた)
『お菓子系は、一番端…明日の調理実習は確かデザート類で選らばなきゃ駄目なんでしょ?なら、あそこね』
人指し指をピンとその方向へ指した。
雲英くんはそれを目で追って
『ありがとう』
目を細めて、ふわりと笑った。