生きる目的などこの男にはない。しかし、皮肉なことに、そうであるが故に自由だ。
人目を気にする必要なんて無い。もはや生きる屍ならば、法や秩序など何の意味も持たなかった。
広場での騒ぎを聞き付けた憲兵に怒鳴り付けられ、毟るように髪を鷲掴みされ、ゴミを扱うように蹴倒されても、かけらほどの自尊心すら遠の昔に無くした男にとっては、気にするほどの出来事ではなかった。
先程の広場の目と鼻の先にある街の守衛施設へと連行されていく様は、まるで見るも無惨な腐乱死体が引きずられているようにも見えた。
命の価値などない男……
【エルドラド】の夜はまだまだつづく……