アルバムをめくる。裏表紙は、全体での集合写真。自分を見つけるのすら、苦労する。同じクラスだった子もうろ覚えだ。
そんな中、すぐに見つけたのは、坂下亮佑だった。小学生にはよくある「噂」の相手。短距離走が得意で、運動会の200Mリレーのリーダーをやった。その時、彼が女子の走者に私を指名したことから、冬まで私は「お相手」として熱愛報道されたのだ。走るのが得意ではあったが、クラスで一番早いわけではない私が選ばれ、さらにバトンを亮佑に渡すハメになった私は、不登校児になってやろうかと思うくらい、イヤでたまらなかった。クラス中の視線を集めている気がした。放課後の練習、エアーサロンパスの匂いとホコリっぽい靴。今になっても、その感覚は鮮明に残る。
私はアルバムを見ながら、一人にやけた。かっこいいと騒ぐまではいかなくても、亮佑はそれなりにクラスの女子にうけていた。勝ち気な瞳と綺麗な額が印象的だ。証明写真でむけるまっすぐな視線と短い髪が、スポーツ好きな少年らしくて好印象だ。
一人目、決まり。と。
何が発展したわけでもないのに、私は元気になっていくのがわかる。
何しているかな?会えてもお互いをわかるかな?