桜声〜水綺の場所〜

なぎさ  2008-03-15投稿
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「みんな大嫌い。死ねば良い」
声には出さず口だけ動かす。こんなこと声に出して言えばクラスのみんなに白い目で見られると思うが,別にいじめられる心配はない。
 なにせこの学校は良い子ちゃんぞろいなんだから。
「水綺(みずき)ちゃん。どうしたの?ぼけぇ〜てして」
クラスメイトの沙百里(さゆり)が話しかけてきた。水綺は急いで笑顔をつくる。
「えっ?ぼけぇ〜てしてた?」
「うん。してた。口も半開きになってたよ」
ふふふっと女の子特有の甲高い声で笑う。
「帰りの会終わったよ?知ってた?」
「分かってるよ。そんなこと〜」
水綺も同じように笑ながら席を立った。
「それじゃぁ,また明日ね」
 最後にニッコリと笑顔をつくって手を振る。
沙百里もばいばいと言って手を振る。
水綺は沙百里に背を向けると顔の力を抜いた。その拍子にため息がでる。
なんでこんなに疲れるんだろう,とまたため息する。
 なんとなく怠くて足取りが重い。水綺は家に帰りたくないのだ。どうせ家には誰もいない。
目頭が熱いので自分が泣きそうになっていることに気付いた。
 誰にも分からないようにさり気なく涙を拭き取る。
下駄箱にいる下級生の服が桃色だった。
あの桜の木を思い出した。
はやく行こう,と水綺はあしばやに学校を出た。



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