梅城ケンヤの顔は見る見る青ざめた。
恐怖からではない。
激しい怒りからだった。
『俺のしてるのは―正義の裁きだ』
だが―\r
刑場のブロックの上に正座させられながら、下に群がる風紀委員達を悠然と見物して、
『どっちも同じさ、どっちも』
田中マサルは鼻でせせら笑った。
『お前さんは《正義》を旗印に殺す。俺は気分次第で殺す。やってる事は同じなんだよ』
『何だと』
梅城ケンヤは田中マサルの背中とスキンヘッドに向けて、憤りに声を荒げ、彼のこめかみに当てた拳銃を小刻みに震わせた。
『同じワルだからな―《臭い》で分かるんだよ。梅城君よ、君はとんでもねえワルだ―ワルには三種類いるんだよ―追い詰められて殺すヤツと楽しんで殺すヤツと―大義名分をこしらえて殺すヤツだ』
『黙れ』
なぜだ―\r
なぜだか梅城ケンヤは余裕を失っていた。
明らかに極悪人・弁護の余地のないイジメグループの親玉に。
たった一人の死刑囚に―\r
『くくく…どうした図星ってかあ?じきお前さんは普通の生徒も殺しまくる!俺には分かるんだよ―今こうして俺が殺されるのがその証拠だ』
『黙れ!』
ガツッ!
ケンヤは怒鳴りながら拳銃でスキンヘッドの後頭部を殴りつけ、紫色に腫れ上がらせてやった。
だが―\r
『つまりな、お前は俺以上のワルって事だ!俺なんか足下にも及ばねえ!殺しを楽しむために権力や組織や《正義》を利用するなんて俺はさっぱり思い付かなかったからなあ―』
『だまれええぇぇェェェェ このおおぉぉォォォォォォ』
パンパンパンパンパンパンパンッ!
立場を無視して勝ち誇る田中マサルの言葉は、ケンヤの金切り声と手当たり次第に撃たれまくった拳銃によってかき消された。
銃声が収まると―\r
肩で息をする梅城ケンヤの足下には―\r
頭の後半分が吹き飛ばされ、ブロックからせり出でてうなだれた田中マサルの死骸があった。
恐ろしい光景だ。
頭に空いた大穴からは、出来かけのトマト料理がぶちまけられ―早くも蝿がたかり初めている。
だが―更に恐ろしい姿をしていたのは梅城ケンヤだった。
ブレザ―の制服の左半分が血によってどす黒く塗装され―\r
その顔は田中マサルの脳髄によって分厚く白粉されてしまっていたのだ!