”魔法”という技術が急速に発達しだしたのはおおよそ3000年前――
小部族の儀式や、技術者による専門的な仕事に使われていた”魔法”が、一般化されたのは最近の事だ。
そもそも”魔法”は禁忌。それの行使によって、大気に生まれる特殊な化学物質は、容易に生態系や人の精神を壊す。
それによって生まれたのが、”魔物”である。
動物から派生した彼等は、本来私達と同じ存在だ。
生まれ持っての”魔”。しかも、他者の我が儘の為だけに着けられた、重い烙印。
だが、そう呼ばれるだけの危険性も、たしかに持ち合わせていた。
そして人類が彼等に対抗する術は―――\r
やはり、魔法だった。
私達は、いま途切れる事のない、螺旋状の悪循環の中にいる。
また、魔物が進化を遂げるのと同様に、人類にも異変が起こりつつあった。
なんとなく、手を見つめる。
今までに会った誰とも相違ない手。
目が、二つある
鼻がある。
足が二本。
――だけど…………
どんなに嘆いても変わりの無い、事実。
人間もまた、進化していた。
人と動物や魔物の間を取ったような姿の亜人種。それがその代表だ。
そして
妖需の母は
半分は、"龍"と呼ばれる生物だった。
考えたくなくても、考えてしまう。
―――私は何なんだろう。
亜人は似たような亜人と暮らすが、その混血は、存在があまりにもアブノーマル過ぎてどちらからも忌み嫌われる。
当然、妖需も例外でなかった。
理不尽な、村人達の迫害。
今まで生きてこられたのは、医療のろくに発達しない村で飛び抜けた呪術と医術の実力を持った、祖母のお陰だった。
同じところを、思考がループする。
その時。
「……っ!?」
誰かに腕を、体を捕まえられた。
濡れた腕から察するに、すぐ横を流れている川に潜んでいたのだろう。
何たる不覚。
たいした悲鳴もあげられないままに、そのまま引きずり込まれる。
徐々に、意識が遠のいていく。
暗黒の中で
必死にもがく。
いつも いつも。
私は ここにいていいのですか。