ブロックに仁王立ちし、田中マサルの血と脳髄に全身まみれながら梅城ケンヤは鬼すら逃げ出す形相をしていた。
そして―\r
『俺に―指図するんじゃねえ』
どかっ
息を飲む風紀委員達の目の前に田中マサルの死体を蹴り落とした!
赤木マモルから差し出されたタオルで汚れた顔を拭きながら、梅城ケンヤはブロックから降りるべくハシゴに足をかけた。
戦争を前にして、彼はZ区最大のイジメグループを殲滅したのだ。
Z区最悪の巨魁を始末したのだ。
正義の裁きを下したのだ。
田中マサルによって死なされた生徒達の仇を討ってやったのだ。
あの悪党に脅える一般生達を救ってやったのだ。
それなのに―\r
梅城ケンヤの心は暗く荒れていた。
拭いても拭いても中々落ちない汚れにまみれたその顔の様に―\r
ワルだと?
この俺がワルだと?
勝手な事を!
イジメグループのリーダーのくせに。
今まで散々イジメを楽しんだくせに!
わずかな付き添いを連れてシャワーを浴びるべくグランドを校舎に向かいながら、梅城ケンヤの心は晴れなかった。
くそっ―\r
同じワルだと?
そんな事言わせるもんか!
絶対に―\r
ああどんな悪い事でもやってやるさ!
イジメグループ共に容赦なんかいるものか!
こんな連中に―ナツ姉さんは殺されたんだ―\r
こんな連中のために、今まで大勢が死んで行ったんだ!
だから―\r
こいつらに報いをくれてやるのさ―\r
俺はこいつらとは断じて違うね―\r
俺は正義のために力を行使する―\r
そしてイジメを撲滅し―新しい学校と教育を創る。
こんなヤツラに―邪魔はさせないさ!
決意を固め直した梅城ケンヤは、開かれたステンレスドアから第一中学校の校舎の中に消えて行った。