森谷一歩。大学3年。人生の冬まっ只中にいます。
姉の千里は早いうちに就職が決まって、親友の中嶋まで決まって、周りの奴らもどんどん就職が決まってるのに俺だけがまだ決まってない(--;)。って嘆いたところで何も始まらない。
とりあえず、大学の就職課に行って情報収集だ!
とは言ったものの、いっぱい貼り出されてる...。
何がなんだか分からないよぉ。っていつものことだけどさ。先生に相談だ。中に入ってみた。
ここの先生って、中年のオッサンで不自然なほどに髪がフサフサしてて、今どき七三。メガネは黒ぶちでいつもずり下がってる。見づらくないのかな?
コーヒーを飲みながら、メガネを曇らせている先生を発見した。
「先生ぃ、なんかいい仕事ないですか?」
「またオマエか。親友の中嶋まで就職が決まって、ようやく焦ってきたか」
ぐさっ(*_*)
「先生、その言葉すごい痛い。もうちょっと優しく言って」
ずり下がったメガネ越しにオレを見ながら先生は言った。
「オマエに優しい言葉はいらん。尻を叩かれなきゃオマエの重い腰は上がらないだろ。
オマエは一体なにをやりたいんだ?」
「それが分からないから相談してるんですよぉ。大手で給料が高くて、仕事が楽で休みが多い所がいいです。」
「そんな所が希望か?」
「え?あるんですか?」
オレは顔を輝かせた。
「あぁ、あるよ。でもな、この大学にはそういう求人はこない。オマエが一流大学にでも編入して、望み通りの求人を斡旋してもらうといいよ。自分を知れっ。」
「えぇーん(;_;)もう少し優しくしてくれてもいいじゃないですか。冷たいなぁ。」
「冷たいじゃない。自分のことなんだから、もっと真剣に考えろ。自分が何をしたいのか分からないんじゃ、こっちだって紹介のしようもないだろう。そんなんだからいつまでたっても決まらないんだよ。」
そうだよなぁ。
オレが先生の立場ならそう言うよ。
あ、いっけね。今日バイトだ。忘れるトコだった。