コインロッカー

Gon  2008-03-15投稿
閲覧数[288] 良い投票[0] 悪い投票[0]

池袋、地下鉄駅、改札横のコインロッカー。ボクはそこで生まれた。
赤ん坊の泣き声がしたので駅員さんが扉をこじ開けてボクを取り出した。だから父親はだれかと問われれば、顔も知らないその駅員さんだとボクは答える。
それから16年が経ち、ロッカーは撤去され、ボクが確かに存在した証はどこにもなくなった。
ボクは拾われては捨てられ、拾われては捨てられた。だが、最近、捨てられないコツをつかんだ。身体を自由にさせてやればいいのだ。減るもんじゃないし。
いまのボクの飼い主は6歳年上の大学生。ボクを不憫に思ったのか、一緒に世界の果てを見に行こうと誘ってくれた。
いま、ただひたすら、世界の果てに向かって車を走らせる。
ボクは助手席にぐったりもたれかかり、窓外を眺める。運転中の彼は無言。
ボクはあとどれぐらい生きていられるだろう。
体に住み着いているウィルスに感染するからと、彼はボクを抱こうとしない。キスさえ嫌がる。
なら、どうしてボクなんか拾ったのか。

世界に果てなど無い。そんなこと知っている。
けれどもボクは彼の好きなようにさせる。
少しでも長く彼と一緒にいたいから。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 Gon 」さんの小説

もっと見る

ノンジャンルの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ