家に着くと、私は家中の鍵を閉めて布団に潜りました。
「もし、あの子がついて来ていたら…」
こういう時に限って、両親は旅行中で、家の中には私一人。
しばらくの間、怖くて寝付けずにいましたが、いつの間にか私はウトウトし始めました。
カラカラカラ
一階から音が聞え、私は目覚めました。
その音は明らかに、玄関の引き戸を開ける音…。
「さっき鍵を閉めたはず…。まさか泥棒?いや。もしかしたらあの子?」
そう思っていると
「ごめんください」
と玄関から、お婆さんらしき人の声がしました。
私は少しホッとしました。
後から考えると、深夜に誰かが訪ねて来るなんておかしい話ですが…。
「ごめんください」
私は、自分の部屋を出て階段を降りて行きました。
「ごめんください」
玄関まで行くと、私は背筋がぞっとしました。
そこには誰もいなかったのです。しかも、鍵もちゃんと閉まっています。
「じゃあ、さっきの声は?」
私が恐怖で玄関を呆然と見ていると
「ごめんください」
と私の背後から声がしました。
私はもう怖過ぎて、声も出ませんでした。ゆっくりと後ろを振り返ると、暗い廊下に顔を伏せたさっきの子供が立っていました。
「ごめんください」
ギッギッギと伏せた顔をゆっくり上げる子供。
私は一目散に自分の部屋へ逃げました。
幸い、私の部屋のドアには鍵が付いていたので、鍵をしっかり閉めて私は布団に潜りました。
ペタッ
ペタッ
ペタッ
裸足で歩く音が鳴り響きました。「こっちへ来る!」私は携帯で友達に助けを求めようとしましたが、電話が繋がりません。
ペタッ
ペタッ
ペタッ
足音は階段を上がって来ました。
「助けて!」
ペタッ
ペタッ
足音が私の部屋の前で止まりました。
私は何故か必死に南無阿弥陀仏と唱えていました。
「ごめんください」
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」
「ごめんください」
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」
あの子供の声は次第に大きくなっていきました。