(それじゃ話しの本題にはいろう。)
いつの間にか現れた銀髪の女の子はそう言って大きな瞳を細めて笑顔を作った。
「なに?なんか頭の中に声が聞こえたんだけど!?」
(あ…すまんな。くすぐったいだろうけど我慢じゃ。そのうち馴れる)
「とりあえず早く本題とやらに入ってくれ。俺の問いに答えた後にな…狐」
洋介はあらためて女の子に向きなおる。
此葉は恐る恐ると洋介の裾をにぎりしめて脇から覗きこむ。
(そうじゃの。狐呼ばわりは嫌じゃから先に名前を教えておこう。)
姿勢を直し髪を整えてからあらためて向き直る。
(儂は狐文(こふみ)。解りやすく言えば妖狐じゃ。)
そういうと狐文は後ろから尾をのぞかせてふらふらとくねらせた。
「妖怪なんているわけないじゃん。」
此葉は狐文の尾を掴み感触を確かめてみる。
(あっ…、んんっ…、こ…これ、よ…よさぬか…、あふっ)
「話しが止まるからやめてくれ…」
身もだえしている狐文を尻目に此葉を引きはがす。
此葉は恍惚な表情になっていた…。
(ふぅ…。すまんな、洋介)
「いいから続けてくれ。」
洋介は手頃な階段に腰を下ろし話しを聞く姿勢を再びとった。
(九尾狐をしっておるか?)
「九尾狐?大昔に災いを運んだ妖怪のボスみたいなやつか?」
(うむ。その妖狐じゃが正解にはその言い伝えは間違いじゃ。)
「どういうことだ?」
(その昔我ら妖狐一族はここより異方の地で災いの元となるものと戦っておった。その戦いでは多くの仲間を失い、傷ついた。しかし我らが王の九尾狐様はあと一歩のところまで災いの元凶となる者を追い詰めたが慣れぬ異国での戦いにより尾を失い災いの元凶を仕留める事が出来なかったのじゃ…。)
いつの間にか此葉も洋介の横に腰を下ろし話しを聞いていた。
「それで…その悪者と狐さんはどうなったの?」
(我が王は尾を失った事により力を失い元凶の者にいずこかに封じられたと聞く。そして自身もまた傷を癒すためにその異国の地で眠りに着いたそうじゃ…)
「でその話しが俺になんの関係がある?」
(その者が眠りについた場所こそがこの国じゃ。)
「そういうだろうと思ったよ。大方俺にそいつと戦え、もしくは力にって話しだろ?」
(おお、よくわかったな洋介!)
「……。」
ため息を漏らした洋介はただ一言答えた。
「断る。」